ばんない写真館
通常の御所一般公開では扉を閉ざしている一角が公開部分の北側にあります。
今まで何があるのか全く知らなかったのですが、実はここに「天皇家の大奥」とも言うべき奥御殿がありました。
江戸城の大奥は、表御殿や中奥とは「御鈴廊下」と呼ばれる一本の廊下でのみつながっていたのはドラマなどで有名な話ですが、京都御所の場合、表の御殿とこの奥御殿をつなげる廊下などは全くありません。
あったのが明治以降に取り壊されたのか、それとも元から無かったのかは全く説明もなく分かりませんでした。
左手の塀越しに御殿の屋根が見えてきました。
奥御殿は京都御所の他の建物とは一応二重の塀で仕切られています…もっともその塀たるやかなり薄い物なので簡単に破られそうには思いますが…。
塀をくぐったところにあるこの区画で一番大きな建物が「
皇后宮常御殿(こうごうぐうつねごてん)」です。16世紀終わり頃から皇后or女御の生活の場として設けられた場所です。もっとも江戸時代に“皇后”の称号をもらった妃は仁孝天皇の先妻・鷹司繋子(しかももらったのは死後)しかいないようですが…
※ちなみに江戸時代に皇后相当の「中宮」称号をもらった妃は4名
この建物は
御常御殿同様の公家風の書院造りになっています。
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ふすま絵も狩野派風の紺碧障壁画で、全体的にスケールの小さい御常御殿といった風情です。
ただ板戸に描かれている絵が花の絵なのがいかにも女性の住まいといった感じです。
庭も設けられています。枯山水で簡素。
この御殿の西側は雑用空間だったのか、かなり地味な作りです。
瓦葺きの書院造りですが、
板戸でふすま絵もありません。
左:横から 右:正面
ここに展示されていたのが「和宮の輿」です。もっとも独身時代に使った物ではなく、明治維新後に帰郷してから使っていた物でした…というか、明治以後も輿を使って生活していたことに驚きます。ちなみに春慶塗で金具は葵の紋が掘られているとか。皇族が使っていた道具にしては地味と思いましたが如何でしょう?
さて、御殿東側でも特別公開
現天皇ご夫妻成婚式の時の装束です
※クリックで拡大
レプリカではないみたい…野ざらしでいいのかヾ(^^;)
後ろはこんな感じ→
身分の高い人の正装がずるずる引きずるのは洋の東西を問わないようで(^^;)
皇后宮常御殿の北隣に連なっているのが
「
飛香舎(ひぎょうしゃ)」です。
これは平安宮大内裏で「藤壺(ふじつぼ)」と言われていたのと同じ建物です
※参考サイトはこちら。『源氏物語』ヒロインの一人「藤壺女御」の名前の元になったことでご存じの方も多いと思います。「藤壺」の由来は中庭に藤の木が植えられていたことにちなむニックネームで、この京都御所でも中庭には藤が植えられた中庭“藤壺”が設けられています。
…今回の特別公開では藤壺までは入場できなかったので写真はありません(T-T)
平安宮大内裏では妃の住む御殿としてこの飛香舎のほかにやはり『源氏物語』で有名な弘徽殿(こきでん)など「七殿五舎(しちでんごしゃ)」と呼ばれる12軒の御殿がありましたが、京都御所でこれだけが復元再建されたのは、平安宮大内裏では飛香舎(藤壺)が
清涼殿の北隣に面して格の高い後宮御殿とされていたからと思われます。
この飛香舎(藤壺)は皇后宮常御殿と異なり寝殿造り風の古風な作りになっています。
これは後宮の公式行事を行うためにわざとそのように作られたとされます。
ここで行われた最も重要な行事は女御が入内するときの儀式でした。
この飛香舎(藤壺)周辺は比較的狭い範囲内に多くの平安宮の建物を復元しており、表の
紫宸殿・清涼殿のような重要な空間だったことが伺えます。
左:
玄輝門(げんきもん) 右:
朔平門(さくへいもん)
飛香舎(藤壺)と同じ平安宮大内裏の建物を復元再建した物です。特に玄輝門は、
承明門同様の平安朝風の朱塗り瓦葺き作りになっています。これらの門は女御入内の儀式のために作られました。
ところで飛香舎のよこに牛車が展示されてました。
葵祭の時に実際に使用されている物だそうです。
…この辺は比較的スペースが狭い中で写真を撮る人が多く、なかなかの混雑でした。
左:北側 右:南側
その飛香舎の西側に隠れるように立てられているのが「
若宮姫宮御殿(わかみや・ひめみやごてん)」です。名前の通り、天皇の子女の屋敷でした。北側の方に縁側があるところを見ると北側が表側になっていたようです。今の子供部屋は南側の日当たりのいいところに作ることが多いようですから、ちょっと江戸時代と今では常識が違ったようで。
書院造りですが、ふすま絵は皇后宮常御殿より更に地味になって、水墨画の草木画です。
ちなみにこの御殿の最後の住人が明治天皇でした。
後宮部西側(裏側)をパノラマ風に
左から若宮姫宮御殿→渡り廊下→皇后宮常御殿
以上で京都御所2009年度春の特別公開は終了。
さくっと見るだけで2時間はかかったでしょうか。団体旅行で来られた方は前半の御常御殿まででこちらに来なかった方が多かったようです。ああ勿体ない。