ばんない写真館
馬屋を通り過ぎ、堀を渡るとかつての彦根城の中核部になります。
ここにかつて藩主が政務を執り、通常の生活を過ごした表御殿がありました。
…明治維新の後、御殿は取り壊され、長年市民グラウンドになっていたのですが…
昭和62年(1987年)に、彦根市の歴史博物館が建てられました。その時外観はかつての表御殿をそっくり復元。この後現在の熊本城本丸御殿まで続く御殿再建ブームの嚆矢となった博物館でもあります。
ここが博物館の入り口。
この部分はコンクリート造りですが、言われないと分からないと思います。
ちなみに、この博物館。靴を脱いで見学します。
館内は結構広いです。
彦根城博物館は彦根市立の歴史博物館なのですが、基本的に彦根藩の歴史しか展示してません(^^;)
訪問した日は彦根城築城400年と言うことで藩祖・井伊直政とその息子の井伊直孝の特別展をやっていました。
他に常設展として歴代藩主の鎧兜や能楽や茶道などのコレクションも見ることが出来ます。
(※展示部分の撮影は禁止)
販売されているパンフレットも色々ありますが、ここの博物館で感心するのは各展覧コーナーにそれぞれ説明のチラシがあり(しかも内容が結構細かい!)、しかもそれを全部集めると
すぐファイルできるように既に穴まで空いていること。
…と、かなり充実していたのでパンフ買いませんでした(^^;)すみません…
この博物館の目玉は「かつての表御殿を復元した木造部分」でしょう。
ちなみに上の館内案内図の下の部分
(赤枠)になります。
※上の案内図との関係をわかりやすくするために復元部の図(左図)は90度ひっくり返しています。
江戸城の大奥では「御
錠口と御鈴廊下」の向こうは男子禁制の奥御殿でしたが、この彦根城の場合は「御
鎖口」の向こうが基本的に男子禁制となっていました。つまり木造で間取りまで復元されたのはいわゆる奥御殿部と言うことになるわけです。
こちらの方は撮影自由でした。
左図でカーソルが代わる部分をクリックすると該当部の説明と写真に飛びます。
<天光室> 左:茶室 右:水屋
奥部の入り口に位置する四畳半の茶室です。
茶道マニアの井伊直弼はここでも茶会を度々催していたそうです。ちなみに煎茶道全盛の幕末に於いて、いわゆる抹茶マニアだったことで直弼は著名です。何事に於いても古風というか流行に背を向ける性格だったようで>直弼
<御座の間> ※左写真で奥に見えるのは「西の間」
<御次の間>(手前が御次の間、奥は御座の間)
いわゆる藩主の居間です。
一見簡素に見えるのは襖が地味だからでしょう。
実は彦根城の表御殿に関して襖の図だけが伝わらず、完全復元できなかったと言うことです。やむをえず現状は唐紙を貼っているそうですが、実際は狩野派の金碧障壁画が描いてあった、かも。
これは「御座の間」あたりから見る庭。
庭の図面は残っていたため、昔通りに復元されました。
<御寝の間>(手前の暗い部屋が御納戸)
読んで字の通り、藩主の寝室です。
ちなみにお納戸は畳敷きの立派な部屋ですが、こちらも文字通り、当時は押し入れとして使われていました。
<御客座敷> 左:南側から 右:西側から
読んで字の如く「応接間」なのですが、私的な空間の奥部に何故応接間?かと思えば、親戚などを呼んだときのために使う場所だったそうです。
<御亭(おちん)>※右奥に見える御殿は「御座の間」のある御殿
表御殿で唯一二階建ての建物です。残念ながら二階部は見学できませんでした。
私的空間の奥御殿の中でも、より私的な空間とされた建物だそうです。
幕末、大名妻子の江戸定住が停止されると、最後の彦根藩主・井伊直憲の正室・有栖川宮宣子女王はここを住居としました。京都出身の女性にとっては江戸より彦根の方が実家に近く気楽だったかも知れませんね。
<局> ※渡り廊下の向こうの白漆喰の建物
「お局様」(死語?)の語源ともなった、奥女中の住まいです。
「局」は解放されておらず見学できませんでしたが、8畳〜15畳の部屋が4つ並んでいるようです。幕末時点では、このような長屋状の建物が後2つ実際は建っていたようです。
ちなみに、この局は数人の奥女中で共用する相部屋でした。
<能舞台>
パンフレット説明によると、元々表御殿にあった物が城下に移築されていたのを再移築した物だそうです。…つまり、これが唯一正真正銘の表御殿遺構、ということになりますね。
江戸時代の大名は基本教養として能楽は必須でしたが、彦根藩の場合は特に明治維新後伯爵となった十五代当主・井伊直忠が能楽マニアだったようでコレクションも充実しています(その出費がすごくて、お付きの人の苦労はなかなか大変だったようですが…)。
藩主・井伊家の歴史と宝物が一度で見られて、お殿様の日常生活も伺える彦根城博物館、見所の多い彦根城の中でも見落とせない場所としてお奨めです。
次は時代劇撮影スポットとしても有名な天秤櫓に向かいます。
続く。